Sat, January 31, 2009

「位相モード動的超音波散乱(DSS)」の論文が掲載されました。

 Journal of Applied Physics誌に散乱位相を利用した微粒子ダイナミクスに関する論文が掲載されました。

Copyright (2009) American Institute of Physics. This article may be downloaded for personal use only. Any other use requires prior permission of the author and the American Institute of Physics.

The following article appeared in (Journal of Applied Physics, Vol.105, Issue 2, 023526, 2009) and may be found at (American Institute of Physics).

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 動的超音波散乱法では、ランダムな運動(ブラウン運動、粒子間衝突)や特定の方向の運動(沈降や浮上)等、運動様式の識別が可能です。そこで重要な役割を果たしているのが相関関数で、この場合、異なる時間における振幅積の平均値と定義されます。動かない粒子ではその積は1のままで、逆に粒子が動いて視野から消えればゼロとなるため、確率問題として、相関関数の減衰速度は粒子の運動速度と対応付ける事が可能です。この相関関数は、ランダムな運動である場合指数関数で、特定の方向に動く場合コサインで表され、特に沈降に揺らぎを伴うような場合、両成分の積で表すことができます。その結果、粒子径に依存した平均沈降速度が評価できるだけでなく、その速度揺らぎについても、(1)セル壁付近の特異な挙動や(2)粒子径を求める第2の手法の提案など、興味深い研究成果がこれまでに得られています。

 さて、このようにパルス超音波を利用し、動的光散乱のアナロジーに着目して開発されてきた動的超音波散乱ですが、先述のようなセル位置に依存したユニークな情報はパルス超音波を用いる事により実現します。本研究では、このようにパルス超音波の魅力である散乱位相にさらに焦点を当ててみました。先ほど述べた相関関数ですが、実は超音波センサーを縦に配置し、粒子の運動をモニタリングしてみると、沈降、浮上に関わらず酷似した相関関数が得られます。ここで上向き下向きの符号情報は失われ、粒子がどちら向きに運動しているのかがわかりません。

そこで、本研究では相関関数法ではなく、位相法で沈降と浮上運動の識別を行いました。この論文では、単に浮上と沈降を符号付で解析できるだけでなく、(時間平均した相関関数を計算することなく)リアルタイムで粒子の運動速度を定量化できる方法を提案しました。

 タイムドメインのパルスをフーリエ変換して周波数ドメインで解析すると、せっかくのセル中の位置の情報が失われます。そこでまず、タイムドメインで位相を評価することにしました。さらに得られた位相データは各点における微分形を計算することで粒子速度へ換算しました。その結果、粒子速度の分布が得られ、この平均値と分散は、動的超音波散乱で求めたものと良い一致を示しました。つまり、瞬間瞬間の粒子速度は、もちろん相関関数から得られる平均化された粒子速度よりも精度の点で劣りますが、(相関時間よりも速い時間領域で)急激な変化を伴う場合や、速度の空間プロファイルを把握したい場合に有効です。

今後、沈降界面の揺らぎを調べたり、速度揺らぎのメカニズム解明に役立つ技術となるでしょう。超音波ドップラー法は類似した方法ですが、その方法との根本的な違いは動的超音波散乱と同様にパルス時間成分ごとに情報が得られる点です。ドップラー法では、パルス時間軸方向にも平均(もしくはクロス相関)を取る必要があり、せっかくの空間情報が失われますが、本手法は動的超音波散乱の長所をそのまま受け継ぎ、リアルタイムで粒子の運動情報が解析可能です。

詳しくは出版社のサイトをごらんください。

posted at January 31, 2009 03:01 PM

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Polymer Molecular Engineering Laboratory
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